号砲が鳴った瞬間のあの熱気、周りのランナーがどんどん前に進んでいくスピード感、本当に圧倒されますね。
絶対に最初は抑えて走ると決めていたのに、気がつけば周りの流れに乗ってしまい、予定よりはるかに速いラップを刻んでしまうのは無理もありません。わたしも何度も同じ失敗をしてきたので、その気持ちは痛いほどよく分かります。
このままだと後半に足が動かなくなって地獄を見る、と頭では分かっていても、抜かれ続ける焦りからブレーキをかけられない自分に、不安を感じているのではないでしょうか。
でも、安心してください。その焦りを解消して、自分の走りを貫くための具体的なステップをここから詳しくお話ししていきますね。
最初の1kmは抜かれまくって大正解な理由と周りのペースに惑わされる心理
スタート直後は、誰もが最高のコンディションと強い緊張感を持っています。だからこそ、周りに最も流されやすい状態にあると言えます。ここで自分の走りを貫くための逆転の思考法を、わたしの実体験をベースに紐解いていきます。
最初の1kmをあえて最下位レベルの意識で走るメリット

周りのランナーがロケットスタートを切る中、自分だけがトボトボと走っているように感じる瞬間は、確かに精神的にきついものかなと思います。
周りの人たちがみんな自分より速く見えて、「このまま置いていかれるんじゃないか」という強い恐怖心や焦りが湧いてくるのはごく自然なことです。しかし、ここで周囲に抜かれまくることこそが、後半の30km以降に笑顔で笑うための最大の布石になります。
実は、スタート直後の最初の1kmで無駄に消費してしまうエネルギーは、後半の30kmを過ぎてから消費するエネルギーの数倍に匹敵するほど、体へのダメージが変わってきます。
人間の体内に蓄えられている糖質のエネルギー(グリコーゲン)には限界があるため、最初からスピードを出しすぎるとあっという間に枯渇してしまうんですね。
ここで「貯金を作る」という間違った意識を捨てて、あえて最下位レベルの意識で体力をしっかり温存しておくことが大切です。ここで溜めた体力は、レースの終盤に力尽きたライバルたちを一人、また一人とごぼう抜きしていく最高の快感へと変わるはずですよ。
スタート直後の高揚感がもたらす脳のバグ

マラソン大会のスタート地点は、数千人、数万人の熱気が渦巻く特別な空間です。大音量の音楽やアナウンス、周囲の歓声に包まれると、人間の脳内ではアドレナリンやエンドルフィンといった興奮物質が大量に分泌されます。これが厄介な「脳のバグ」を引き起こす原因になるのです。
アドレナリンが大量に出ている状態だと、実際の肉体的な疲労や、自分が今どれくらいのスピードで走っているかという感覚が極端に麻痺してしまいます。
「なんだか今日の自分は絶好調だし、このペースならどこまでも楽に走れそう!」という感覚自体が、スタート直後特有の脳のバグ、つまり一時的な勘違いであるケースがほとんどです。
この脳の勘違いに騙されてペースを上げてしまうと、アドレナリンの効果が切れる10km〜15km過ぎあたりで急激に重い疲労が押し寄せてきます。この一時的な脳のバグに騙されず、いかに冷静な大人の自分を保てるかが、フルマラソンを無事に完走するための最初の、そして最大のハードルと言えますね。
周りのペースに惑わされないための具体的な抑え方
どれだけペースを抑えようと心に誓っても、いざコースに出ると自制心は簡単に吹き飛んでしまいます。そこで、自分の意志の強さに頼るのをやめましょう。誰でも今すぐ実践できる、物理的かつ具体的な2つの方法を紹介します。
ベテランシニアランナーの後ろをロックオンする追従作戦

自分の自制心が信用できないなら、目の前に「絶対にオーバーペースにならない先導役」を勝手に決めてしまうのが一番の近道かなと思います。
わたしが特におすすめしたいのは、大会のTシャツではなく過去のさまざまな大会のフィニッシャーTシャツを着こなしているような、いかにも走り慣れていそうなベテランのシニアランナー(おじいちゃんランナー)を見つけて、その背中にロックオンすることです。
彼らは長年の経験から、自分の最適な巡航速度、つまり最初から最後まで一定のペースで淡々と走り続ける技術を極めています。スタートから数キロの間は、周囲の派手な追い抜きには一切目をくれず、そのベテランランナーの後ろ姿だけを見つめ、ストーカーのように一定の距離(2〜3メートルほど後ろ)を保って走りましょう。
視界に入る情報をその人の背中だけに絞ることで、「周りに抜かれている」という視覚的な焦りがシャットアウトされます。これだけで、周囲の激しい混雑やハイペースな流れに惑わされることなく、自動的に安全なエコモードのペースをキープできるようになりますよ。
スマートウォッチの自動通知機能をフル活用した強制セーブ

現代のランニングに欠かせないスマートウォッチですが、ただタイムや距離を記録するだけではもったいないです。もしお使いの時計に「ペースアラート(またはアラート設定)」という機能があれば、レース前日までに絶対に設定しておきましょう。
ペースアラートとは、自分が事前に設定した目標ペースよりも速くなったり、逆に遅くなったりした際に、振動(バイブレーション)や音でリアルタイムに知らせてくれる便利な警告機能のことです。
マラソンランナーに人気が高いスマートウォッチメーカーといえばGarmin。
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スタート直後、脳がバグって無意識にスピードが上がってしまったとしても、手首がピピッと震えて警告してくれることで、強制的に現実に引き戻されます。「あ、いけない。また周りに流されて速くなってた」と瞬時に気づけるので、すぐにブレーキを踏むことができます。
自分の主観的な「気持ちいい感覚」ではなく、スマートウォッチという客観的なデータに判断を委ねることで、焦りの気持ちをきれいに消し去ることができます。時計の画面をチラチラ見続けなくても、振動が教えてくれるので走りに集中できるのも大きなメリットですね。
この部分は横にスクロールできます。
| チェック項目 | 具体的なアクション内容 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| ベテランランナーの追従 | スタート後3キロまでは、前を走るシニアランナーの背中から視線を外さない | 視覚的な焦りを防ぎ、一定の巡航ペースを自動で維持できる |
| ウォッチのアラート設定 | 想定ペースの上限(1キロあたりプラス5秒〜10秒)でアラートを設定しておく | 脳のバグによる無意識のオーバーペースを振動で強制セーブできる |
| マインドのリセット | 周りにどれだけ抜かれても、「彼らは後半に落ちてくる」と心の中でつぶやく | 精神的な優位性を保ち、後半の後半にごぼう抜きする楽しみに切り替えられる |
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スタート前の心構えと絶対に超えない上限ペースの設定
レース中の冷静さは、スタート前の準備段階で9割が決まると言っても過言ではありません。2019年に初めてフルマラソンに挑戦したとき、わたしもスタート前の準備不足とメンタルのコントロールミスで大失敗しました。その苦い経験から学んだ、レースを有利に進めるための事前準備のコツをお届けします。
目標タイムではなく上限ペースを決める重要性

多くのランナーは、「サブ5(5時間切り)を目指すから、1kmあたり6分50秒ペースで走ろう」といったように、目標タイムから逆算した平均ペースばかりを意識しがちかなと思います。
しかし、初マラソンやビギナーの方が本当に設定すべきなのは、平均値ではなく「これ以上速いスピードで走ったら絶対にNG」という『上限のペース(制限速度)』です。
例えば、目標とする巡航ペースが1kmあたり6分30秒であれば、そこから15秒ほど速い「1kmあたり6分15秒より速い数字はどんなことがあっても絶対に出さない」という厳格なルールを自分の中に作っておきます。
下限(遅れること)を気にするよりも、上限の壁をしっかりと決めておく方が、スタート直後の下り坂や、追い風に乗ってついついスピードが出そうになったときにも、ブレーキをしっかりと踏みやすくなります。この上限ペースを頭に叩き込んでおくだけで、レース全体のゲームプランが驚くほど安定しますよ。
スタートエリアでの混雑を味方につけるマインド

大規模な都市型マラソン大会になればなるほど、スタートの号砲が鳴ってから実際にスタートラインを通過するまでに何分もかかりますし、通過した後も大混雑で思うように前へ進めなくなります。
この混雑に対して、「予定通りのペースで走れない!タイムロスになってしまう!」とカリカリして焦ってしまうのは非常にもったいないです。
この大混雑は、イライラする対象ではなく、「自分の代わりに強制的にペースを抑えてくれるありがたい安全装置」だと180度マインドを捉え直してみてください。のろのろ運転の渋滞の中にいる間は、どんなに走りたくても物理的にスピードを出せません。
実はこの最初の数キロの強制的なスローペースこそが、体温をじんわりと上げ、関節や筋肉を優しくほぐすための「最高のウォーミングアップ期間」になってくれます。渋滞が解消される頃には、体もしっかりと温まり、後半に足を残すための完璧な状態が整っているはずです。
後半に足の痛みを残さず笑顔でゴールテープを切るために

スタート直後の大混雑や、周りのランナーにどんどん抜かれていく時間は、最初は焦りや敗北感を覚えるかもしれません。「本当にこれでいいのかな」と不安になることもあると思います。
しかし、その焦りをぐっとこらえて、スマートウォッチの数値やベテランランナーの背中を信じて自分のペースを守り抜いた人だけが、30km過ぎのあの過酷なエリアで、信じられないほどの推進力を発揮できます。
周りが足を踏み出しては立ち止まり、歩き始めてしまう中で、あなただけが軽快なピッチで次々と前に進んでいけるのです。
今回紹介した「おじいちゃん追従作戦」や「スマートウォッチのペースアラート設定」を、ぜひ次のレースや普段の練習で試してみてくださいね。最初の1kmで驚くほど冷静になれたとき、あなたのマラソンライフは劇的に変わるはずです。
まずは次の練習の時から、あえて最初の1kmをいつもより30秒意図的に遅く走る練習を、1回だけでもいいので取り入れてみてください。自分の体をコントロールする感覚が身につくと、走るのがもっと楽しくなりますよ。
ペースをしっかりコントロールできた後は、レース後のダメージや足の痛みをいかに早くリカバリーするかについても、また改めてじっくり向き合いたいテーマですね。一緒に少しずつステップアップしていきましょう!



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