夏の厳しい暑さの中でのトレーニングや、秋口の本番レース。走り終わった後にウエアを見たら、汗が乾いて塩で真っ白になっていた……なんて経験はありませんか?
ポケットに市販の塩分タブレットを忍ばせて、20分〜30分おきにこまめに口へ放り込んでいるはずなのに、「なぜか30km手前で足がピキッとつりそうになる」「全体的に体がだるくて力が入らない」と悩んでいるランナーは本当に多いんです。
実は、人一倍汗をかく、いわゆる「滝汗ランナー」の場合、一般的な塩分タブレット「だけ」に頼った補給計画では、実際の塩分損失スピードに全く追いついていない可能性が極めて高いんですよ。
この記事を書いた人:市民ランナーRUN蔵
30代のサラリーマンランナーで、妻と息子の3人暮らしです。2019年の「UPRUN川崎多摩川河川敷マラソン大会」で念願の初フルマラソンに挑戦したのですが、知識不足から30km地点で脚に激痛が走り、足が完全にロック……。執念だけでなんとか完走したものの、翌日からまともに歩けないほどの満身創痍に陥りました。
この強烈な悔しさをきっかけに、「なぜ自分の脚は動かなくなったのか?」を解明すべく、コンディショニング、身体のケア、そしてランニング中の栄養・電解質補給について徹底的に研究を開始!当サイトでは、僕と同じように怪我や失速に悩むランナーに向けて、実体感を交えたリカバリー法や役立つノウハウを発信しています。
マラソンで滝汗をかくランナーに必要な塩分補給量の目安

走っているときに流れる汗。それは単なる「水」ではなく、体内の重要なミネラルが大量に溶け出した液体です。特にナトリウム(塩分)の消費量は想像以上に激しく、滝汗ランナーが陥りがちな補給不足には明確な理由が存在します。
まずは、汗と一緒に失われる電解質のメカニズムと、僕たちが目指すべき正確な補給基準について詳しく紐解いていきましょう。
滝汗によって失われる水分と塩分のメカニズム
僕たちが激しいランニングや夏場のトレーニングで汗を流すとき、体内からは水分と同時にナトリウムを中心とした電解質(ミネラル)が急速に奪われていきます。人間がかく汗1リットルの中には、平均して約1.0g〜3.0gもの食塩相当量(ナトリウム)が含まれていると言われているんですね。
ここで重要なのが「個人差」と「発汗量」です。体質的に「滝汗」をかくランナーの場合、気温が高い時期には1時間のランニングだけで1.0〜1.5リットル以上の汗をかいてしまうことが全く珍しくありません。仮に1時間に1.2リットルの汗をかき、その汗の食塩濃度が2.0g/Lだったとすると、わずか60分の走行だけで約2.4gもの塩分が体外へ排出されている計算になります。
このような状態で「水やスポーツドリンクだけ」をガブガブ飲んで水分補給を行うとどうなるでしょうか?体内の水分量は一時的に戻りますが、血中のナトリウム濃度が相対的に激減し、「低ナトリウム血症」に近い状態(希釈性低ナトリウム血症)を引き起こしてしまいます。

体が「これ以上水分が入ってくると血液の塩分濃度が薄まって危険だ!」と判断すると、喉の渇きを止めたり、尿として水分を出そうとしたり、最悪の場合は激しい足のつり(筋痙攣)や頭痛、吐き気を引き起こすのです。
僕が2019年の初フルマラソンで30km地点で足がロックしたのは、まさにこの「大量発汗による電解質濃度の崩壊」が大きな原因でした。
タブレットの塩分量と実際の必要量に存在する巨大なギャップ
多くのランナーが補給の頼みの綱にしているのが、ドラッグストアやコンビニで手軽に買える「塩分タブレット」ですよね。持ち運びも便利で、走っている途中でもカリッと噛めるので重宝します。しかし、ここで一度、市販の塩分タブレットに含まれている「実際の食塩相当量」をしっかり確認してみましょう。
一般的な塩分タブレット1粒に含まれる食塩相当量は、およそ0.1g〜0.2g程度しかありません。商品パッケージに「塩分補給!」と大きく書かれていても、内容量としてはかなり控えめな設定になっていることが多いのです。
💡 滝汗ランナーが直面する補給の計算結果
例えば、1時間のランニングで汗とともに2.0gの塩分を失う滝汗ランナーの場合、タブレットだけでその損失量を100%補おうとすると、なんと1時間に10粒〜20粒ものタブレットを食べなければならない計算になります!

フルマラソン4時間のレースなら40粒以上……これはどう考えても現実的ではありませんよね。さらに、タブレットを一度に何粒も噛み砕いて胃に流し込むと、高濃度の塩分が胃粘膜を刺激し、激しい胃痛や吐き気などの消化器系トラブルを引き起こすリスクが高まります。
つまり、滝汗ランナーにとって「ポケットのタブレット数粒」は、あくまで補助的な存在に過ぎないということなんです。「タブレットを食べているから大丈夫」という安心感こそが、実はレース後半の大失速や足つりを招く罠になっているかもしれません。
発汗量と適切な塩分摂取量の科学的基準

では、僕たちは一体どれくらいの塩分を補給するのが理想的なのでしょうか?スポーツ医学や栄養学の観点からは、長時間の運動時には「1リットルの水分補給に対して、およそ1.5g〜2.0gの食塩(ナトリウム約600〜800mg)」を合わせて摂取することが推奨されています。
厚生労働省が公開している熱中症予防の指針でも、運動時には0.1〜0.2%程度の食塩水(100mlあたりナトリウム40〜80mg)やスポーツドリンクの飲用が推奨されています(出典:厚生労働省『熱中症関連情報』)。
一般的な市販スポーツドリンクの場合、500mlあたりに含まれる食塩相当量は約0.5g〜0.6g程度(0.1%前後)です。つまり、日常の軽いジョギングなら十分ですが、滝汗ランナーが炎天下でフルマラソンや30km走を行う場合、市販スポーツドリンクの塩分濃度では少々物足りないのが実情です。
だからこそ、自分の発汗レベルに合わせた「塩分濃度のカスタマイズ」や、より高濃度の電解質アイテムの導入が必要になってくるわけですね。
過剰摂取を防ぎながら効果を高める塩分補給のタイミングと具体的なテクニック

失われた塩分を補う必要があるからといって、無計画に塩分アイテムを摂取するのは厳禁です。一気に大量の塩分を摂取すると、血圧の急上昇や胃腸への過度な負担を招いてしまいます。
体への負担を最小限に抑えつつ、スムーズに身体へ吸収させるための「タイムライン」と「アイテムの組み合わせ術」について詳しく紹介します。
スタート前から差がつく!レース前後のタイムライン
効果的な塩分・水分の補給計画は、実は「走り出す前」から始まっています。走る直前に慌てて水分や塩分を流し込んでも、胃の中でチャポチャポと音を立てるだけで、筋肉や血液へスムーズに届きません。
【スタート60分〜30分前】:事前ロード(プレハイードレーション)
スタートの30分〜1時間前までに、経口補水液や少し塩分濃度の高い電解質ドリンクを200ml〜300ml程度、ゆっくりと時間をかけて飲んでおきます。これにより、体内の水分・電解質タンクを満タン状態にしておくことができます。あらかじめ血中ナトリウム濃度を適正値にしておくことで、走り始めてからの急激な電解質低下を防ぐことができるんです。
【走行中(スタート〜ゴールまで)】:定時補給ルール
走っている最中は、「喉が渇いた」「脚がつりそう」と感じる前に補給するのが絶対鉄則です。人間の感覚は意外と鈍く、喉の渇きを感じた時点ですでに体内の水分・電解質は2%以上失われていると言われています。基本的には「15分〜20分おきに100〜150ml程度の給水」を行い、あわせて「30分〜45分おきに塩分アイテムを一口摂る」というルーティンをあらかじめ決めておきましょう。
【ゴール後】:リカバリー補給
走り終わった後もケアは終わっていません。ゴール直後は筋肉がダメージを受け、体内はカラカラの状態です。冷えた経口補水液や、塩分の含まれたスープ、味噌汁などを少量ずつ摂取することで、疲労回復のスピードが劇的に変わりますよ。

経口補水液とタブレットの「ハイブリッド補給法」
滝汗ランナーの救世主となるのが、「経口補水液(OS-1やクラシエの電解質パウダーなど)」と「塩分タブレット/塩分サプリ」を組み合わせたハイブリッド補給です。
経口補水液は、水とナトリウム、ブドウ糖の濃度が計算し尽くされており、小腸で最も素早く吸収される浸透圧(アイソトニック〜ハイポトニック)に調整されています。しかし、レース中にボトルで何本も持ち歩くのは重くて不便ですよね。
🌟 RUN蔵流:ハイブリッド補給の実践手順
- ベース給水:給水所(エイドステーション)ごとに提供されるスポーツドリンクや水を必ず受け取り、小まめに喉を潤す。
- 追加塩分:気温が高い日や汗が吹き出す15km〜30km地点にかけては、エイドで水を飲むタイミングに合わせて高機能な塩分タブレットや「塩飴」「塩サプリ(200mg以上のナトリウム含有)」を1粒投入する。
- スペシャルボトル/ウエストポーチ:長距離練習や自前でドリンクを持てる大会なら、ソフトフラスコ(柔らかいボトル)に濃いめの経口補水液パウダーを溶かして携帯し、定期的にちびちび飲む。

このように、「水分の吸収速度に優れたドリンク」をベースにしながら、「持ち運びやすいタブレットやサプリ」で足りない塩分量を補うという2段階のアプローチを取ることで、胃腸を壊すことなく高い塩分濃度を維持できるようになります。
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実践!レース・練習で使える塩分補給プラン比較表
具体的な補給プランのイメージが湧きやすいように、タイミングごとの具体的な補給内容と狙える効果をまとめました。スマホで見ている方も崩れないよう調整してありますので、参考にしてみてくださいね。
※横にスクロールして全項目を確認できます。
| タイミング | 補給内容の具体例 | 食塩相当量の目安 | 期待できる効果・狙い |
|---|---|---|---|
| スタート前(60〜30分前) | 経口補水液 200〜300ml | 約0.6g〜0.9g | 体内の電解質タンクを事前に満たす 前半の急激な脱水・塩分ロスを予防 |
| レース前半(〜15km) | 各給水所のスポーツドリンク(約100ml)+20分おきに水 | 約0.1g〜0.2g / 給水 | 体温上昇を抑え、安定したペースを維持 胃腸に負担をかけないマイルドな補給 |
| レース中盤(15km〜30km) | スポーツドリンク + 塩分サプリ/タブレット1粒(30分毎) | 約0.3g〜0.5g / 30分 | 滝汗による本格的な塩分ロスに対応 筋痙攣(足つり)の前兆を防ぐ |
| レース後半(30km〜ゴール) | 塩分濃いめのエナジージェル + 経口補水液/水 | 約0.5g〜0.8g / 回 | エネルギーと同時に高濃度電解質を注入 足のロックを回避し、完走・PB更新へ |
自分の体に合わせた適切な塩分補給量の見極め方

どれだけ一般的な計算式やマニュアルを勉強しても、当日の気温、湿度、風、そしてあなた自身のその日の体調や発汗量によって「ベストな塩分量」は刻一刻と変化します。
大切なのは、自分の身体が発する微小なSOSサインを見逃さないこと、そして事前の練習で自分の発汗傾向をセルフチェックしておくことです。
体が発する「塩分不足」と「危険度」の初期サイン
走っている最中、体内のナトリウム濃度が低下してくると、脳や筋肉は様々なシグナルを発して「SOS」を出してくれます。これらを「ただの疲れだ」と見過ごしてしまうと、あっという間に足がロックしたり動けなくなったりしてしまいます。
【レベル1:初期の違和感】
- 手の指先や顔のむくみ:体内の塩分濃度が薄まると、体が水分を細胞外に逃がそうとして手がパンパンにむくむことがあります。「あれ、指輪や時計がキツイな」と感じたら塩分不足の合図です。
- ふくらはぎや太ももの「ソワソワ感」:筋肉がピクピクと痙攣する前段階として、皮膚の下がソワソワするような妙な違和感を覚えます。
【レベル2:中度の警戒サイン】
- ウエアやキャップに浮かぶ「白い塩の結晶」:汗が乾いたときにウエアの黒い部分や帽子のツバに白い粉(塩)が大量に付着していたら、かなりの高濃度で塩分が流出しています。
- 軽度の頭痛や生あくび、集中力の低下:脳への電解質供給が滞り始めると、あくびが頻繁に出たり、ペース維持の集中力が途切れがちになります。
【レベル3:重度の危険サイン】
- 突然の激痛を伴う足つり(筋痙攣):ふくらはぎ、太もも裏、足の指などが一気に硬直します。僕が初マラソンの30km地点で味わった「足が固まって一歩も動けない」状態です。
- 吐き気やめまい:消化管の動きが止まり、補給を受け付けなくなります。この状態になったら無理をせず、直ちにレースを中断して救護所に駆け込む必要があります。
練習中に今すぐ試せる!発汗量のセルフチェック方法
自分の汗の量を正確に把握するために、週末のロングラン(15km〜20km走など)でぜひ試してほしいのが「走る前後の体重測定セルフチェック」です。やり方はとっても簡単ですよ!
📊 自分の「滝汗度」を知る3ステップ
- 走る直前の体重を測定:ウエアを着た状態で体重計に乗る(例:65.0kg)。
- 走っている最中の「飲水量」を記録:ボトルや自動販売機で飲んだ水の量を覚えておく(例:500ml=0.5kg)。
- 走り終わった直後の体重を測定:汗を拭き取った上で体重計に乗る(例:64.0kg)。
この場合の計算式は以下のようになります。
【失われた汗の量】=(走る前の体重 − 走り終わった後の体重)+ 走行中に飲んだ水分量
上記の例で当てはめると、(65.0kg − 64.0kg)+ 0.5kg = 1.5kg(約1.5リットルの発汗) となります!
もし2時間のランニングで1.5リットルの汗をかいていたとすれば、1時間あたりの発汗量は0.75リットル。夏場ならこれが1.2〜1.5リットルまで跳ね上がります。自分の発汗ペースが分かれば、「あ、今日の気温なら1時間で1リットル飲む必要があるな」「じゃあ塩分はタブレット2粒じゃ全然足りないから、塩分サプリと経口補水液を用意しよう」と、科学的で根拠のある補給計画が立てられるようになるわけです。

滝汗に負けない確かな一歩を踏み出すための補給計画
2019年、僕が初めて挑戦した「UPRUN川崎多摩川河川敷マラソン大会」。30km地点を過ぎた途端、両脚のふくらはぎと太ももが一気に強烈な激痛に襲われ、足が完全にロックしました。
「え、なんで?給水所でちゃんと水も飲んでたし、塩分タブレットも何粒か食べたのに……」
沿道の声援に背中を押されながら、最後は走るというより「脚を引きずりながら歩く」ような状態で、執念だけでなんとかゴール。しかし、本当の地獄は翌日からでした。激しい筋肉損傷と電解質異常で、ベッドから起き上がることすらできず、階段を下りるのも手すりにしがみつく始末。妻には心配をかけ、息子と遊んであげることもできず、自分の準備不足と知識の浅さに心底情けなくなりました。
でも、あの痛烈な悔しさがあったからこそ、僕は身体のメカニズムやリカバリー、電解質の補給について必死で勉強を始めることができたんです。
人一倍汗をかく「滝汗ランナー」の身体は、決して弱点ではありません。それだけ効率よく体温を下げる能力が高いという、アスリートとしての素晴らしい才能でもあります。ただ、人より汗を多くかく分だけ、身体の中にアプローチしてあげるケアも丁寧にしてあげる必要がある、ただそれだけのことだったんですよね。
まずは次の週末の練習から、いつものポケットのタブレットにプラスして、ソフトボトルに濃いめの経口補水液を作って走ってみませんか?あるいは、走行前後の体重を測って「自分はこんなに汗をかいていたんだ!」と実感してみるだけでも大進歩です。
自分のカラダの声に耳を傾け、ピッタリ噛み合う補給戦略を手に入れたとき、30km過ぎの重く絶望的な壁は、スッキリ爽快な「ラストスパートのゾーン」へと変わっていきます。僕と一緒に、怪我なく笑顔で完走できる最高のランニングライフを楽しんでいきましょう!
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